教えてください! 子ども・若者 支援の現場 参加団体インタビュー
2022年9月30日(金)
まずやってみることが大事。HOPEの支援も後押しに!
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第1回
NPO法人 めぐろ子どもの場づくりを考える会こどもば
代表理事 横山誠さん
まずやってみることが大事。
HOPEの支援も後押しに!
まずやってみることが大事。HOPEの支援も後押しに!
2022年9月30日(金)
Q.
横山さんのご経歴やこどもばの団体概要をお聞かせいただけますか。
横山さん社会人を経験後、保育士として私立保育園に12年間勤めました。卒園した子たちが1年生でも夜に1人で留守番している時代だったので、地域で見守り、子育ての支援・サポートができたらと、こどもばを2015年に任意団体で立ち上げました。2019年にNPO法人化しています。2016年3月から毎月1回、「めぐろおいしい子ども食堂」を運営してきました。食事の提供でホッとできる場所になればと続けてきて、子どもだけでなく、保護者の居場所としても定着しています。2021年12月には学習支援をスタートしました。
子ども食堂の様子(コロナ前)
ボランティアさんたちと作る食事
Q.
横山さんが学習支援「スマイルスタディルーム」を始めたのには、どのようなきっかけがありましたか。
横山さん最近まで目黒区では学童保育所は3年生までというところが多かったんです。学童保育中は職員の方についてもらい、宿題などを教えてもらえますが、学童を卒所すると自分で時間を決めて勉強しなければならなくなります。共働きが多い現在では、勉強が分からなくても、近くに教えてくれる家族がいないケースも多い。塾など勉強を教えてもらえる環境に身を置きたくてもおけない、他の習い事が忙しい、行きたくないなど理由は様々ですが、自宅個人学習のみの子どもは、勉強が難しくなってくる4年生くらいから、学力の差が出てき始めて、勉強がつまらなくなる。それに伴って学校生活でのいろいろな面でのやる気の低下にも繋がっているのではと思います。私たちの子ども食堂で勉強を…と考えましたが、子ども食堂では低学年の子も多く、遊びたくて、なかなか勉強する気になりません。そこで、子ども食堂と学習支援を分けて、学力差の出てくる中・高学年や中学生を主な対象に、まずは宿題をできる場を開きたいと考えました。HOPEさんにキッズドアさんをご紹介いただいたことも実現を早める後押しとなりました。
Q.
ボランティアさん募集の苦労や、キッズドアさんの研修を受けたご感想はいかがですか。
横山さんSNSやボランティアセンターで学習支援のボランティアを募りました。学力アップ以上に、子どもたちに寄り添い、子どもたちの居場所を共に作ってくれる方に来ていただけたらと思っています。キッズドアさんの研修は、学習支援のプロですから、教えるスキルに加えて、さまざまな子どもの対応事例やヒヤリハットを具体的に教えていただきました。
Q.
お子さんはどのように募集しましたか。配慮したことや気遣ったことはありましたか?
横山さん区に後援申請をして、チラシを近隣の小中学校へ配布したほか、スクールソーシャルワーカーさん経由でご紹介いただいたお子さんもいらっしゃいます。「子ども食堂が新たにやる学習支援」の位置づけでご理解いただき、申し込みも1〜2日ですぐ定員いっぱいになりましたね。子ども食堂に多い低学年の子に比べて、高学年や中学生は事前の三者面談でも、大人しくて真面目でした。塾や通信教育を経験して続かなかったお子さんもいるので、勉強したいものを自分で考えて持ってきて、自分のペースで勉強をし、分からないところは自分から聞きましょうと伝えています。この学習会の目的である「学習習慣を身に着ける」ことができるよう、また来たいなと思えるような暖かい雰囲気づくりを心掛けています。
生徒募集のため作成したチラシ
Q.
活動を始めて、子どもたちの変化をどうご覧になっていましたか。コロナ禍での活動で工夫もされていましたね。
横山さん子どもたちも次第にボランティアさんと顔見知りになり、大人と子どもの相性も見えてきて、打ち解けた関係になっていきました。小学校が異なる子ども同士が仲良くなり、少しずつ自分を出せているかなと感じます。コロナ禍で感染拡大した時期(オミクロン株の時期)は児童館とも相談し、一時休止のあと人数の多かった小学生は密回避のため、半数が交互に来る分散開催に一時的に切り替えました。中学生は期末テストも近かったので、休止中も希望者はオンラインで参加できるようにしました。
Q.
東京都目黒区という地域ならではの特徴は何かありましたか。
横山さん地域全体では塾に通うお子さんも多いですし、中学生は課題が多く、テストで求められるレベルも高いです。そのため日々の授業についていけない子どもは、理解していない部分を振り返り学習する余裕もなく、宿題の提出が優先課題になっている子もいます。本当は子どもたちの理解を大切にしたいですが、本人の提出課題を終わらせたいという気持ちも大事にしてあげたいため、目の前の課題の空欄を埋めることに追われてしまうこともしばしばです。前半を宿題の時間に充て、後半に復習をするなど、試行錯誤しています。
Q.
成績をよくすることと学習の理解はまた別の問題でもありますね。
横山さん基本は子どもたちがやりたい勉強をすることが大事ですが、難しいですね。定期テストの準備も必要なのに、そもそもテスト以前の基礎的な内容である、小学生の学習内容を理解できていないことを子どもたちも自覚しています。特に6年生から中学生になり、学習の理解や体制ができていなかったことで起こる反動が大きいようです。中1の壁と言うのか、学習内容が大幅に変わります。気づいたときにうまくギアチェンジして、自分で学習する習慣をつけ、スマイルスタディルームに来ない日も自分で勉強できるようにサポートしたいです。
Q.
勉強に苦手意識がある子にどのような工夫をされていますか。
横山さん気になる子はなるべくマンツーマンできめ細かく支援するほか、宿題以外で何かやるときは、苦手な内容より得意なことの方がモチベーション高く取り組めると感じるので、得意なことで学習に弾みが付けばいいなと思います。難しいこと、わからないことをやりたくないのは大人も同じです。こちらから苦手そうな部分を指摘して、ここをやってみたら?と押し付けるのも良くないと考えているので、わからないことを勉強してわかりたい、知りたいと思えるよう、少しずつ苦手な部分にも向き合えるように導いていきたいですね。
Q.
横山さんはボランティアさんとのかかわりをとても大切にされているように感じました。ボランティアさんとのコミュニケーションはどのように取られてきましたか。
横山さん事前研修に参加いただき、連絡もこまめに取っています。特に変わったことをしているわけではありません。意識しているのは、後片づけの際は、雑談を交えるなど、堅苦しくなくかかわっていただける雰囲気です。講師の方、それぞれの教え方を信頼してお任せします。大学生からシニアの方まで、年代も幅広く、ボランティアさん同士も、今の学生さんの様子や、仕事、活動の話などおしゃべりして、多世代間でお互い刺激になる部分もあるようです。そもそもこの活動は、自分たちだけではできません。いろんな方の力を借りた方が知恵も経験値も入ってきます。万が一、私が何かの事情で活動ができなくなっても、いろいろな方にかかわっていただく方が組織としても継続しやすいです。
Q.
学習支援だけでなく、今後やってみたいことや、こどもばの理想像はありますか。
横山さん団体名の通り、いろんな場を考えて作りたいです。子どもが楽しめることなら何でもありですね。当初からやりたいのは縁側のように、小学生がふらっと立ち寄れる放課後の居場所です。今まではスポットのイベントでやっていましたが、月に何回かでも曜日を決めて、自治会館など今ある既存の場所を利用してできたらと思います。計画は以前からありましたがコロナ禍で見送ってきました。機を見てトライしたいです。今までの経験を生かして、子ども支援のノウハウを広げていけたらと考えています。
Q.
既存のサービスにはなくても、やりたいと思ったら、それぞれに合うやり方があると思います。ステップアップしたい方や団体に向けてメッセージはありますか。
横山さん私たちの学習支援は始めたばかりですが、子ども食堂も含め、どんなやり方でもOKです。「こうじゃなきゃいけない」とあまり窮屈に考えず、できることをできる人たちが集まって、できるやり方で、まずやってみることかなと思います。自己完結しないで、いろんな方の力を借りながら続けていくことも大事です。
Q.
最後にHOPEに期待することを教えてください。
横山さん私たちが学習支援をやるきっかけになったように、子ども支援と言ってもさまざまな切り口があるので、子ども食堂に限らず、伴走支援の距離感でサポートをいただけるととても助かります。私たちがキッズドアさんをご紹介いただいたように、資金援助だけでなく、ノウハウやソフト面など、HOPEならではの多様なつながりを活かしたご支援を今後も続けていただけたら嬉しいです。
取材担当の真島・杉山と共に(中央が横山さん)
タイトルのお写真:お話をうかがった横山誠代表理事